あの夜の記憶、竹の話。
ねぇ、突然思い出したの。あれは遣らずの雨が降る夜だった。
大学の正門で待ち合わせして、すぐ近くのハワイアンのお店に入ったよね。あの時飲んだパイナップルビール、美味しかったなぁ。
あの夜、私たちは同じ家に帰ることにしていた。上京組の私たちは同じ街でひとり暮らしをしていて、お互いの家に遊びに行きあいっこしてたね。
明かりを消して瞼を閉じた。
夢が近くなる少し前に、あなたは竹が好きだと話してくれた。
悲しいことにも、あなたがどうして竹が好きなのかは忘れちゃったの。なんだっけ、真っ直ぐな所があなたと似ているからだったかな。あなたの竹みたいにしなやかな心が好きだよ。
そこで私も竹の話をした。
竹は節目があるから真っ直ぐに伸びることができる。節がないと横にしなってしまったり折れやすくなったりする。節があることで、強くてしなやかな構造になっているんだって。
あなたの生きる姿勢は竹のようだね。
この言葉をあなたはとても喜んで受け取ってくれた。それがなんだか嬉しくて、いまでも覚えているの。だから 竹をみるといつもあなたの笑顔を思い出すようになったんだよ。
前にもこのことは文章に起こしたことがあったよね。だけど、自分を信じる勇気を失いかけたときにあの文章も消してしまったの。いまではとても後悔してるよ。愛おしい思い出だから、忘れたくなんかない。あの雨が降る夜のこと。
あれからちょうど2年経ったみたい。あの時 私があなたに渡した言葉はいま私の背中を押している。
この社会の中で、風にも雨にも負けず、大人であるためには、自分が自分であるためには、しなやかさが必要だとやっと気付いたのです。
自分が思っていた以上にせっかちな私には「急がない」とか「立ち止まる」って難しい。
だけど同時に、自分が信じた道を真っ直ぐに突き進み続けるのも簡単じゃない。
気づかない間に少し斜めになってしまったり、よそ見したくなったり。なにしろ疲れてしまう。環境が大きく変化してからは、自分の歩幅さえももうわからないの。
近くにある竹にゴツンゴツンと当たってしまうようになったから、私なり考えた。どうして一点先を真っ直ぐ見続けることができないのか。
答えは「節」だった。だからあなたとした竹の話を思い出したの。そしてこうしてまた文字に起こしている。次こそ消さないからね!
まずは自分の節を大切に、一度立ち止まって正しい方向に意識を向けなおす習慣をつけるのが今の私の課題。
実はついさっきまで涙が止まらなかったんだ。だから今日は1日雨宿りをしていたよ。
だけどまた明日から頑張ってみようと思う。軌道修正できたのは、竹の話を忘れさせないあなたの真っ直ぐでしなやかな心のおかげだよ。ありがとう。
あなたが明日も笑顔でありますように。
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